雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

トンネルを掘る話

1941年初版発行の、トンネル掘削工事の概略を述べた入門書です。
当時において、過去最大の難工事であった丹那トンネル工事を例にとり、その難しさをわかりやすく解説しています。
普通の大人向けの本だと思って読み終わったところ、最後に掲載された編集部からのメッセージに
この本は讀者として國民學校上級生と中等學校一二年生とを豫想し、正しい科學的知識を與へることを目標として編輯されました。
とあったのには驚きです。
昔の人は、子供のころからかなり難しい本を読んでいたのでしょうか。

当時のトンネル工事は現代のように機械化が十分ではありません。
ダイナマイトと削岩機を用いて掘った穴を、松などの木材を使って支えるというのを繰り返して少しずつ前に進むものでした。
また、この工事の初期にはダイナマイトも電気着火ではなく、導火線に人が火をつけて逃げるという作業だったようです。
湧水の激しいところでは導火線に火をつけることが困難なため、あらかじめ導火線に火を付けたダイナマイトを切羽まで持ち込むという恐ろしく危険なこともやっていました。

トンネル工事で最大の敵は地下水です。
この工事でも断層帯に滞留していた地下水が突然噴出したり、または地下水まじりの土が崩落して穴がふさがるなどという事故が何度も起きました。
15年間の工事の間に犠牲者は67人にものぼる厳しい現場でした。
(当時の基準から見ると、必ずしも特異なほど危険だったわけではないようですが。)
特にひどいのが、崩落により工事中のトンネル内部に閉じ込められた事例です。
当初は空間があったために数日間は生きていたようですが、地下水が徐々に空間を埋め尽くし、発見された時には全員が天井付近に固まって亡くなっていたそうです。

印刷が悪いためにいくつか掲載されている写真が全く見えないのが残念ですが、図はすべて鮮明でわかりやすいです。
冒頭にトンネルの歴史について述べられているのですが、
日本で關門海峡に海底トンネルを作つて本州と九州をつなぐことに成功した。
また津輕海峡にトンネルを作つて本州と北海道をつながうといふ考へがある。
これと同じやうに、イギリスとフランスの間すなはちドーヴァー海峡の底へトンネルを掘って貴社を通さうといふ計畫があつた。
という記載があったのは面白いです。
今となってはこの津軽海峡トンネルもドーバー海峡トンネルも実現してしまいました。
津軽海峡を結ぶ青函トンネル工事では丹那トンネル以上の湧水に悩まされたことが知られています。
現代でもトンネル工事は極めて危険なものなのでしょう。
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  1. 2018/03/01(木) 00:29:31|
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