雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

電子立国日本を育てた男―八木秀次と独創者たち

八木アンテナで有名な八木秀次の伝記です。
古本屋さんに並んでいたのを見つけて購入しました。
本書の内容の真偽については、かなり議論があるようです。
とくに、八木と共同で「八木アンテナ」を発明したとされる宇田新太郎の業績が不当に矮小化され、かつ宇田が八木に「八木アンテナ」発明の成果を独り占めされたと筋違いの恨みを抱く妄執的な人物として描かれている点については、異論があります。
実際、Wikipediaでは「八木アンテナ」は「八木・宇田アンテナ」に転送され、かつ当該の記事では本書の記載が誤っていることが述べられています。
しかし、Wikipediaの記載が、宇田の弟子でありかつ本書の記載が虚偽であるとの広報に熱心な人物によるものであるため、本書の著者の主張とWikipediaの主張がどちらが正しいのか私には判断する材料がありません。
ただ、「取材協力者」の欄には、宇田に限らず本書で悪役として描かれている人物の親族と思われる名前がみられることから、必ずしも取材に応じた人々の期待通りの内容ではなかったと想像されます。

八木の業績については、下記の3つが主に挙げられています。
  • 八木アンテナの発明
  • 阪大物理学科の立ち上げと、湯川秀樹や菊池正士などの育成
  • 江崎玲於奈など、日本で冷遇されていた優秀な研究者に対する権威ある職や賞の推薦
なかでも最も当人が誇りとしていたのは、二つ目の組織立ち上げと育成だったとのことです。
現在の基準から見るとかなり若くから東北大で組織の長として活躍していた八木は、原子モデルを発表したことで有名な長岡半太郎に乞われて大阪大学の立ち上げにかかわりました。
研究者としても有能だったのでしょうが、それ以上に組織づくりのほうが本人の性にあったのかもしれません。

本書では、技術的な詳細内容にはほとんど触れられていません。
学者同士のどろどろした主導権争いや、役人、軍人たちとの利害の対立などが主なテーマです。
特に一線を退いた高齢の学者たちの、地位や名誉、賞に対する執着は、極めて印象的です。
私も職業柄、国の研究機関との付き合いがあるのですが、最後には稼いだカネがものをいう私企業とは全く違った、ある種不毛にも見える権力争いは本当に恐ろしいものがあります。
役人たちが存在感を示すために口を出すことでさらに恐ろしい混乱がうまれるのですが、軍の発言力が強かった当時はさらにひどかったと推測されます。
これは業績が定量化できないことからくるものである種やむを得ないところですが、それにしてもどろどろとした世界ではあります。

先述の通り、本書の内容の真偽は私には判断できません。
しかし、極めて読みやすく、かつ面白いのは事実です。
読み物として割り切ったほうがいいのかもしれません。
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  1. 2018/02/03(土) 23:25:45|
  2. ★★★★★
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