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雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

田園回帰1%戦略: 地元に人と仕事を取り戻す

数多ある地方創生に関する本の一つです。
この系統の本としては、以前に「地方圏の産業振興と中山間地域」や「限界集落」などを読んだのですが、どちらも著者の気持ちが強く出すぎていて冷静な議論ができていない印象を受けました。
「地方圏の産業振興と中山間地域」では地方(島根県)でうまくいっている企業をいくつか紹介しつつ、地方にもまだ望みがあると強調していたのですが、数値の裏付けがなく極めて根拠が薄弱に見えました。
また、「限界集落」では行政の怠慢を責めるばかりで、なぜそのような状況から抜け出せないかについての考察が全くなされず、いわゆる「床屋政談」のような印象を受けました。
もうちょっと冷静に、現実的に議論している本を探していたのですが、本書はある程度その希望に合致していました。

本書のタイトルの「1%戦略」には二つの意味があります。
ひとつは、「人口1%取り戻しビジョン」です。
これは、現状の人口推移のままだと高齢化率、人口減少率が下げ止まらないような地域であっても、人口の1%程度の住民が新たに移住してくれば劇的に将来の人口構成が改善するというものです。
本書で挙げられている例は、人口572人の島根県山間部の集落です。
今の傾向が続くと30年後には人口が半分以下になると予想されるのですが、子育て中の家族、子供なしの若夫婦、定年後の夫婦が毎年ひと世帯ずつ、合計7人移住してくると仮定すると、人口は500人弱で下げ止まります。
このように、どの程度の人数を他地域から引き寄せることができればよいかという目標値を計算により具体的に定め、それに向かって努力しようというものです。
地方への工場誘致などで一度に大量の人員が移住してきた場合は短期的には人口が増加するのですが、数十年後には彼らは同時に高齢化するために、その地域はゴーストタウン化します。
そうではなく、数は少なくとも定常的に人を増やすことで持続的に地域が発展できるようにしようという考え方です。

もうひとつは「所得の1%取り戻し戦略」です。
これは、地域が消費するお金のうち、域外に支払われているもののうち1%を地域内で消費されるようにすることで、地域の所得を増加させようというものです。
いわゆる地産地消の考え方で、たとえば大量生産できないために広く流通しない農産物を地元で流通できるようにしたり、小規模な水力発電や薪ストーブなどでエネルギーを地元で調達したりというものです。
1%というと効果が低いように見えますが、ちゃんと計算すると1%であっても大きな効果があるということが示されています。

どちらも数値に基づいて効果を定量的に示しており、納得のいく内容でした。
ただ、その難易度については私にはよくわかりません。
本書によると、ここ5年くらいで急速に中国地方の山間部における人口増加率が改善しているとのことなので、それなりに現実味のある数値なのかもしれません。
ただ、巻末に示されていた、「郷の駅」構想はうまくいくのか疑問に思いました。
山間部において必要とされるインフラを一か所に集めて、小さなハブを作ろうというものです。
公共交通機関もハブを起点とすることで路線の本数を減らせるし、一つの機能に対して一人の人間を雇うほどの仕事がなくとも、ハブに多くの機能を持たせることで一人分の仕事を作り出そうという考えです。
ただ、自動車が運転できる人は結局国道沿いの郊外型の店に行ってしまうので、理屈通りにはいかないように思うのですが…。
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  1. 2018/01/17(水) 00:09:12|
  2. ★★★★
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