雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

あすの日本海―開発の思想

昭和45年の新潟日報紙面企画連載をまとめたものです。
当然ながら新刊としてはもう絶版となっており、古本屋さんで見つけたものです。
最近自分で気づいたのですが、十年~数十年前に書かれた未来への提言のような本を、古本屋さんで好んで買う傾向にあるようです。
新ニッポン百景」「考えられないことを考える」「むらの日本人」「日本列島その現実シリーズ」など…。
新刊本ですが、「東京一極集中の経済分析」もかなり古い本です。
その本が執筆された当時からみた「未来」から顧みて、書かれていることが妥当であったかどうかの答え合わせを行うという楽しみ方ができるからです。
本書も、同じような読み方ができて面白かったです。

本書の中で小説家の小松左京氏は日本海側の諸都市のことを「ハモニカ長屋」と表現しています。
これは、ハーモニカのように横方向には壁で区切られており、日本海側の都市同士のつながりが非常に薄いさまを言ったものです。
金沢は大阪、富山は名古屋、新潟は東京、山形は仙台といった太平洋側の大都市とつながりが深い割には、金沢―富山―新潟―山形の交通は著しく不便でした。
過密と大気汚染に悩む太平洋側に変わり、上記諸都市に加えてロシアや朝鮮半島沿岸を加えた環日本海文化経済圏というような壮大なスケールの構想がなされていますが、残念ながら2017年末現在ではそのような動きは極めて弱い状況です。
むしろ、北陸新幹線開業に伴い富山~新潟直通の電車が廃止され、上越妙高で乗り換えるか、高速バスを利用するか、場合によっては大宮を経由した方が早いというような状態となってしまいました。
環日本海構想とは真逆の方向に向かっていると言わざるを得ません。

ロシアや北朝鮮との地理的な近さを活かすべきという主張自体は理解しますが、残念ながらどちらも抑圧体制の国家であるという大きな障壁があります。
ある化学メーカーの社長は「カントリーリスクは踏んではいけない」といいましたが、国家体制として何が起きるかわからない状態では、とても安心してつきあっていけません。
ソ連が崩壊してロシアとなりましたが、かつてのスターリン時代の大粛清における官僚機構はそのまま温存されたため、ロシアという国家自体にはまだ大粛清というものがいつ起きても不思議ではないという閉塞感が漂っているように思います。
環日本海文化圏にとっては、対岸のほとんどが民主的でない国家であったというのが不幸なところです。

本書の最後のほうには「雪国改造」と題して、日本海側の経済的不利の大きな要因である雪が扱われています。
あえて雪になじみのない太平洋側出身の識者を集めて検討していますが、やはり日常的に雪害に苦しんでいる住民にとっては浮世離れしたように見えたようです。
彼らは消雪パイプなどでできるだけ雪を無くそうとするのですが、識者たちは「利雪」を唱えます。
しかしその「利雪」の内容が、あえて歩道に雪道を残して歩車分離するとか、太平洋側に雪を運んで水不足解消とか、または雪の中に学校を作ることで勉学に集中できるとか、雪をあまり知らない私から見ても非現実的と言わざるを得ません。
なんとか雪を活かしたいという意欲はわかるのですが…。

昭和40年代は瀬戸内では赤潮が問題となり、かつ各都市は人口増による住宅不足に悩まされていました。
これに対して本書では、日本海側はまだ公害問題が軽微であり、かつ土地には余力があることを強みとしようとしています。
しかし、現段階では水の浄化能力が上がったことにより瀬戸内ではむしろ貧栄養化していますし、人口は恒常的な減少をなんとか食い止めようとしている段階です。
50年ちかくも経つと当然なことですが、時代は変わったものだと思います。
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  1. 2017/12/24(日) 16:14:59|
  2. ★★★★
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