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雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

ボーン・フィ・デッド : ジャマイカの裏社会を旅して

ジャマイカについてはほとんど無知の状態です。
ハイレ・セラシエを崇敬するラスタファリ運動、ドレッドヘアとラスタカラーに象徴されるレゲエ文化、そしてガンジャ(大麻)。
私にとってはヒッピー文化と混同している部分が多く、ジャマイカといえばなんとなく、大麻の幻覚の中で愛と平和について語り合うという、やや退廃的なイメージがあります。
しかし、当然ながら大麻などの麻薬にはその市場を取り仕切る裏社会が不可欠であり、血なまぐさい殺し合いがつきものです。
とても、ラブアンドピースなどと言える状況ではありません。

本書の著者はハーバード大を卒業したのちにジャマイカに移り住み、当地のギャングに親しく接することでその実情を知る人物です。
もともとは二大政党PNPとJLPにより操られたギャング同士の抗争から始まりました。
西部劇に影響を受けたジャマイカのスラム住民の一部は、驚くほど安い金銭と引き換えに政治家の手先となって人を殺し始めました。
彼らはジャマイカのレゲエミュージシャンともつながりが深く(というより出自が近く)、本書でもたびたびボブ・マーリーの名前が出てきます。
その後、抗争がエスカレートし、政治家を経由して警察や軍隊もが絡む恐ろしい殺し合いに発展します。
対立するグループとの競争の結果、彼らが売りさばくガンジャの価格も下落し、ますますドラッグが国中に蔓延する結果となりました。

1980年代から、ガンジャに変わってコカインやスピードなどのより依存性が高い薬品が流通します。
ギャングのメンバーたち自らもコカイン中毒となりつつも、場所をニューヨークに移してますます殺し合いが激しくなりました。
結局著者が接触した人物たちのほとんどは殺されるか薬物中毒になるかのいずれかにより亡くなりました。
一方で、二大政党の党首は安寧に引退したのですが、彼らが二人ともジャマイカでは少数派の白人であったことが印象的です。
黒い皮膚・白い仮面」ではフランス領マルチニーク諸島において、肌が白ければ白いほどよいという「漂白への渇望」が描かれていましたが、これと全く一緒の現象がジャマイカでも起きていたのです。
ラスタファリ運動はアフリカ回帰により黒人性を肯定しようというものですが、その反面で黒人に対する自己蔑視は強く、特権階級たる白人政治家により黒人のギャングたちは使い捨てにされてしまう構図となっていました。
今でもジャマイカでは当時の影響が残り、街中には銃があふれ犯罪率が高い状態のままです。
また、ニューヨークではジャマイカ人といえば麻薬というような偏見が広まり、今でも風評被害が広まっています。

女性の著者がこういう世界に単身で飛び込んだのは本当に驚くべきことだと思います。
アメリカ人向けに書かれているので地名などの注釈がなく、現在地点がジャマイカなのかアメリカなのかがよくわからなくなることがありますが、おおむね全体的に文章は読みやすいです。
本書の出版社「Mighty Mules' Bookstore」というのは聞いたことがなく、検索しても出てこないということは倒産か解散してしまったのでしょうか?
絶版になるには惜しい内容だと思いますが…。
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  1. 2017/12/16(土) 19:58:52|
  2. ★★★★★
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