雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

イスラームの黒人奴隷

黒人奴隷といえば、奴隷貿易で新大陸に送られた大量のアフリカ人が思い浮かびますが、それ以前からイスラム教徒は黒人を奴隷として使役した歴史があります。
一方で、キリスト教徒によるプランテーションのような大規模な経済活動による動機づけがなかったため、取引された奴隷の総数は比較的少なかったようです。
また、イスラム教の教義にはっきりと肌の色による差別の禁止がうたわれていたことともあり、黒人奴隷たちへの扱いも新大陸に比べると良好でした。
奴隷の用途自体、コックや兵士、または側妾などのサービス業に近いものが多く、生産ノルマを課せられることも少なかったようです。
しかし、のちにキリスト教徒による奴隷の需要が高まるにつれて、彼らと取引を行ったイスラム教徒は大規模な奴隷狩りを開始しました。
本書では、歴史を追ってイスラム教徒と黒人奴隷の関係が述べられています。

著者は以前に「ブラック・ディアスポラ」なる本を書いていたのですが、この中ではイスラム教徒による黒人奴隷貿易について十分に扱いきれなかったため、本書を執筆したという事情のようです。
一方で、奴隷というくくりでいうと黒人に限る必要もなく、実際イスラム教は白人や黄色人種の奴隷も使役していました。
有名なマムルークは黒人ではありませんでしたし、これ以外にもアラブ人同士で戦争して敗北した側が奴隷となるというのもよくあったようです。
本書ではこれらの奴隷も取り扱われており、むしろ「黒人奴隷」というカテゴリーに無理があるように感じました。

もともと人種差別が否定されていたイスラム教ですが、現在ではアラブ人による黒人差別は非常に激しいものがあります。
スーダンでは北部のイスラム教徒アラブ人が南部のキリスト教徒黒人を搾取する構造が続いており、これが南スーダン独立の主要因となりました。
これも、大西洋の奴隷貿易時代の奴隷狩りを通じて作り上げられた意識なのかもしれません。

本書は読みやすいのですが、やはり「黒人」という区分が本当に必要だったのかは疑問です。
「イスラム教徒の黒人奴隷」「イスラム教徒によって使役される黒人奴隷」「イスラム教徒によって使役される白人奴隷」の内容がいっしょくたに議論されている印象を受け、ややまとまりに欠けるように思いました。
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  1. 2017/12/12(火) 20:34:33|
  2. ★★★★
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