雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

ムーア人の最後のため息

悪魔の詩」で有名なサルマン・ルシュディの著作です。
本書は「真夜中の子供たち」、「悪魔の詩」と合わせて三部作をなしているそうですが、とくに「悪魔の詩」は長大でハードルが高いという噂だったので先にこちらを読んでみた次第です。
とはいえ、本書もほぼ同じくらい長大だったことが判明しましたが…。

インドのムンバイ近郊のエレファンタ島で代々香辛料を扱ってきたダ・ガマ家と、ムンバイのユダヤ人であるゾゴイビー家の夫婦から生まれたモラエスによって語られる物語。
バスコ・ダ・ガマの末裔とされるダ・ガマ家はその起源をポルトガルに持つのに対し、ゾゴイビー家の先祖はレコンキスタによりイベリア半島から放逐されたムーア人でした。
モラエスの出自はヨーロッパ、ユダヤ、インドなど複数にまたがり、非常に複雑であいまいです。
著者のルシュディ自身も、インドからパキスタンに移住した両親を訪れた際に、作品に対する検閲の厳しさからすぐに居住地のイギリスに戻ったという経験があるとのこと。
モラエスのルーツの多様性は、著者の経験をある程度は引き継いでいることでしょう。

モラエスの母オローラは画家として大成する一方で、父エイブラハムはダ・ガマ家の家業を非合法な方向に伸長して大幅に規模を拡大しました。
しかし最後には現実にも起きたボンベイの連続爆破事件とよく似たテロによりすべては崩壊し、オローラの作品もそのほとんどが焼失しました。
登場人物たちはすべて強烈な感情とともに生きており、そして若き日の善良さ、美しさは年をとるとともに失われます。
なかでもモラエス自身は通常の2倍の速度で成長し、老いるという病を抱えており、30代半ばにしてすでに70代の諦観を身に着けてしまったかのようです。
また、かつてのオローラの信奉者であったヴァスコ・ミランダは、晩年にはオローラを含めたゾゴイビー家すべてを憎み狂気の中でその崩壊を手助けすることになります。

全編にわたり非現実と現実が入り混じった狂気が充満していて、読んでいて相当疲れる作品でした。
著者も時期も全く異なるのですが、最近読んだ「竹原秋幸三部作」にもよく似ていると思います。
注釈はつけられているのですが、ある程度はインドの歴史と地理に詳しくないとよくわからないところが多いでしょう。
それでも、物語にどっぷりつかれるという意味ではとても面白い小説だと思います。
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  1. 2017/11/05(日) 19:58:32|
  2. ★★★★
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