雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

世界しあわせ紀行

タイトルとは裏腹に一貫してやや沈鬱な雰囲気が漂う不思議な本です。
「幸福学」の権威であるフェーンホーヴェン教授が作成したデータベースをもとに、さまざまな国を訪れて幸福になる方法を探し求めたというノンフィクションです。
世界で最も幸福な国の一つであるアイスランド、紛争などがないにもかかわらず最も不幸な国の一つであるモルドバ、「国民総生産(GNP)」に変わり「国民総幸福量(GNH)」の指標を提唱するブータン、微笑みの国タイなど…。
我々は「楽園」といえば普通は南国を想像しますが、フェーンホーヴェン教授のデータベースによると世界で最も幸福な国の多くは北方に存在します(アイスランド、スイス、スカンジナビア諸国など)。
一方、同じ北方の国々でも旧ソ連邦の共和国は幸福度が低い傾向にあります。
不都合な事実としては、幸福度が高い国は均質性も高いことが多く、移民に寛容だからといって幸福度が高いわけではありません。

とくにモルドバで明らかになったのは、住民同士の相互信頼のない場所では不幸になることです。
旧ソ連の国ではかつてのスターリンによる大粛清の影響がまだ残っているようで、隣人や友人にすら完全に心を許すことはできません。
このため、他人に不幸が起きた時も、それを心配したり助けたりするのではなく、自分に降りかからなかったことを感謝するような傾向があるそうです。
これは、インドの貧困層の幸福度が比較的高く、アメリカの貧困層の幸福度が(インドの貧困層に比べて格段に裕福であるにもかかわらず)低いことにもつながります。
インドの貧困層はコミュニティは崩壊しておらず、隣近所同士の付き合いは機能しています。
一方アメリカの貧困層はしばしば孤立しており、社会的にも無視されたかのような存在となっています。
結局のところ幸福度は個々人の気の持ちようよりもむしろ、その社会全体によるものだという結果に見えました。
もしそうだとすると、著者の「幸福になる方法を探し求める」という目的は残念ながら達成できなかったか、または「幸福になる方法などない」という残念な結果が判明したということになります。
なぜなら、周囲の環境が幸福度には重要なのであり、その人ひとりの行動の寄与は小さいからです。

著者の文章は基本的には説得力があり、不都合ながらもその通りなのだろうなと思わせられるものばかりでした。
巻末付録の日本人同士の対談は極めて浮世離れしていて、本書の内容とはなじんでいないように思いましたが…。
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  1. 2017/10/22(日) 19:12:52|
  2. ★★★★
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