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雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

火の記憶

収奪された大地」の著者ガレアーノによる作品です。
著者は本書について序文に
アンソロジーではなくひとつの文学的創造物として、文書資料に依りつつも全く自由に動き回る。
著者はこの作品がいったいどのジャンルに属すかを知らない―――小説、随想、叙事詩、記録、証言…おそらくそのどれでもあり、またどれでもないのだろう。
と記していますが、確かにその通りで小説ともノンフィクションともいい難い内容です。
プロローグとしてアメリカ大陸の先史時代から伝わるさまざまな神話、言い伝えが配置され、続いてコロンブス来訪以降に発生した出来事が年代順に述べられます。
一つ一つの節はおおよそ1ページ以内に収まる程度の短さなのですが、これが大量につながることで当地で起きた有名な出来事がすべて網羅されるような形になっています。
映像などで短いショットが次々と連なることでスピードを感じさせるようなものがありますが、これと似たような効果を持っているように思います。
極めて長大な物語ですが、それでも約500年の歴史のなかで重要な場面ばかりを凝縮しているため、すべての場面がクライマックスのような盛り上がりです。

本書の記載が1984年で終了することについて
御覧の通り1984年で終わります。
それ以前でもそれ以降でもないのはなぜか、こちらにも不明。
おそらくこの年が我が亡命の最後の年、ひとつの周期の終わり、ある世紀の終わりだからでしょう。
と述べられています。
ウルグアイ出身の著者は軍事クーデターにより亡命していたのですが、民政移管後の1985年に帰国を果たしました。
これ以降、一時期ウルグアイ経済は低迷したものの、現在も民政は続いています。
この意味において著者がいう「ひとつの周期の終わり」というのは正しかったのかもしれません。

本書で描かれるのは、そのほとんどが収奪の歴史です。
そもそものコロンブスの来訪も現地民に対する略奪、殺戮を伴っていましたし、その後の征服の歴史や、巨大なアメリカ合衆国によるラテンアメリカの裏庭化など、常に民衆は巨大な力により奪われ続けました。
(このあたりは「収奪された大地」でも主張されていることですが)
不公正に対する怒りから立ち上がった反乱者が、軍事的に敗北して死を迎える描写は本書内で繰り返し現れます。
そして彼らはみな、大義に殉ずることを誇りながら殺されていくように描写されています。

ただ、本書ではラテンアメリカの歴史的背景についてはの説明は極めて不親切です。
そのため、突然人名が現れるのですが、その人名についての予備知識がないと何についての文章なのか全く分からないでしょう。
私自身、本書の半分以上がよく理解できなかったと思います。
たまたま「大航海時代叢書」を読んでいたので16世紀くらいまでの記述は理解できる部分も多かったのですが、例えばメキシコ革命やニカラグア占領などについては全く知識がなく、あまりピンと来ない部分も多かったです。
日本語訳自体はとても良いのだと思いますが、それにもかかわらず日本人が本書を読んでちゃんと理解できるかははなはだ疑問です。
本質的にはとても優れた本なのだと思うのですが…。
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  1. 2017/10/11(水) 23:49:22|
  2. ★★★★
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

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