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雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

絶滅された世代―あるソヴィエト・スパイの生と死

古本屋さんで見つけた本です。
本書の著者エリザベート・ポレツキーは、ソ連のスパイ活動に従事しながらも最後にはスターリンにより暗殺されたイグナス・ライス(通称ルードヴィク)の妻です。
本書では、スターリン登場後にいかにして当初の共産主義の理想が崩れ去り、「大粛清」により多くの人が消え去ってしまったかが描かれています。
スターリン時代のソ連における「大粛清」については「人生と運命」でも読んだことがありますが、いつ官憲に言いがかりをつけられるかわからずに生きるというのは想像を絶する状態だと思います。
私は5年ほど前に一度だけロシアに行ったことがあるのですが、街中を軍人が歩き回っているのを見るだけで非常に恐ろしかったのを思い出します。
日本の自衛隊と違って、「市民に愛される軍隊」というような姿勢は全く見られないような国柄だったので…。

有名な3度のモスクワ裁判による粛清以外にも、非公式な暗殺が大規模に行われました。
本書の大量の訳注では登場人物の解説がなされているのですが、その多くはかつてのソ連政府要人だったにもかかわらず粛清により命を失った人々です。
NKVDの長官であったエジョフをはじめとして、ヤゴーダ、メッシングなどは、粛清への貢献ののちに自らも粛清されました。
また、ナチスによる粛清を逃れるためにソ連に亡命した人々の多くも、スターリンによる粛清を免れることができません。
暴力を振るう側と振るわれる側が目まぐるしく入れ替わる状況は想像もつきません。

以前にも同じことを書いたような気がするのですが、スターリンが用いた「政敵にレッテルを貼ってそのすべてを否定する」手段は現代でもよく見られます。
これの恐ろしいところは、実行している当人たちは悪気があってやっているのではなく、正義感に基づいてやっているところです。
かつての新左翼ではこのようなレッテル貼りにより、意見が異なる人を内ゲバで殺してしまうこともありました。
人が人を嫌いすぎると、少し常軌を逸してしまうのではないかと思います。

本書は面白いのですが、少し翻訳がこなれていなくて読みづらいです。
また登場人物も多くて整理しながら読む必要があります。
それでも、真剣にじっくり読めば当時の恐ろしい状況を肌で感じることができるように思います。
参考文献に記されている、粛清されたブハーリンの妻による手記「夫ブハーリンの想い出」や、イグナス・ライスの同僚で米国に亡命したクリヴィツキーによる「スターリン時代」も読んでみようと思います。
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  1. 2017/09/17(日) 19:01:19|
  2. ★★★★
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  4. | コメント:0

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