雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

自然界における左と右

本書は一般向けの科学書としてはかなり有名な古典だと思います。
著者のマーティン・ガードナーについては数学マジックや数学パズル関連の本しか読んだことがなかったので、古本屋さんで見つけて一度読んでみようと購入しました。

まず一読して全体の構成が見事だと思いました。
一般的な対称性の話から始まり、結晶構造の話で自然界が基本的には対称構造をもとに構成されていることを解説します。
ここで一転してDNAの二重らせん構造や酒石酸のキラリティを用いて生物界での対称性の破れを示し、最後には(当時としては)最新の素粒子理論では無生物でも対称ではないことを説明します。
単に対称性についてのコラムを集めたようなものではなく、全体として一つの話が流れるように綿密に計算された内容です。

一方で、素粒子論のあたりになってくると「宇宙の統一理論を求めて」と同じような苦しさを感じました。
素粒子論は直感的に理解することは実質的に不可能であり、かなり複雑な数式を用いなければほんの少しでも説明することができないのです。
しかし、そのような内容を数式を用いずに無理に説明しようとするために、結局は専門用語の羅列になり「○○というものがある」というだけの文章になるため、読む側としてはいったい何が言いたいのかわからないという状態に陥ります。
本書でも「奇妙さ」「真素」「μ中間子」などといった単語が特に定義されずに突然現れるので、「そういうものがあるのか」以外の感想が浮かばずに読み進めるしかない状態です。
私自身の考えでは、このような素粒子を簡単に説明しようという努力自体が無駄だと思うのですが…。

本筋とは関係ありませんが、著者はDNAのような複雑な構造を持つ化合物であっても、長い時間と適切な環境さえあれば自然発生すると考えています。
これは、いわゆる「有機物スープ」からDNAが自然に生成することで生命が誕生したということを意味します。
一方で、かなり昔に読んだ「遺伝的乗っ取り」ではこのような考え方は否定しており、DNAではなく初期の生物においては無機物(鉱物)が複製されることで種の保存がなされていたという説が取られています。
このあたりの妥当性は私には判断できませんが、定説としてはどちらが優勢なのかがやや気になりました。

50年近く前の翻訳だけあって、日本語は読みづらいです。
そろそろどなたか新訳出してもよいころだと思いますが…。
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  1. 2017/08/15(火) 23:48:01|
  2. ★★★★
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