雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

福島原発事故と複合リスク・ガバナンス

大震災に学ぶ社会科学」シリーズです。
タイトルを見ると福島原発事故に関する内容だけなのかと思ったのですが、「福島原発事故」「複合リスク・ガバナンス」が等価に並んでおり、本書の後半は福島原発とはあまり関係のない話でした。
それなので購入した時の期待とは違った内容だったのですが、むしろ後半部分のほうが面白いと思います。

本書の「複合リスク・ガバナンス」においては、「食品中の放射性物質」「医療対応」「交通システム」「金融」の4つが紹介されていました。
特に厳しい状況だったように思えるのが、食品中の放射性物質の問題です。
放射線に汚染された食品の流通を速やかに規制する必要がありながらも、その安全の閾値については科学的にも不明な点が多く、判断が非常に難しかったようです。
震災直後にはいくつかの関係機関の発表した内容が矛盾していたり、いったん発表された規制内容に対する反対があったりで混乱が発生しましたがこれはやむを得ないことなのかもしれません。
他の問題と違って過去の経験による蓄積もなかったわりには、まだうまく問題を対処できた方でしょう。

個人的には放射線はある種の人々にとっては宗教的な「穢れ」と似たような反応を引き起こしているように思います。
確かに子供への放射線被ばくはできるだけ避けるべきものなのですが、そうでなくても、被ばく量が自然界の放射線と似たような値であったり、または発症よりも先に寿命が来るであろうと思われる高齢者への被ばくであっても拒否反応が強いことにたいして、科学者たちの反応はあまりよくなかったように思います。
「穢れ」への反応と同じように感情的には受け入れがたいものに対し、科学的な説明を繰り返すことにはあまり意味がないからです。
このような状況下で放射線許容量の閾値を定めることは、極めて難しい問題だったと想像します。
一方、交通システムの復旧や金融関連については、過去の災害時の経験を活かして見事な対応がなされました。
災害は多種多様であり、災害が起こるたびにその対応に対して新たな課題が発生してしまうものですが、そのような中でも着実に行政の対応は改善しているように思います。
経験を積む機会がないことが本当は望ましいのでしょうが…。

前半部の福島原発事故に関する部分は、同じ章内でも節によって著者がバラバラになっています。
しかも、同じ著者が別の章の節も執筆していたりするため、全体の統一感が全くありません。
百科事典の細切れの記事を読まされているような印象を受けました。
福島原発に関連する各関係機関の連携不足を厳しく糾弾する文章が目につきますが、その割には本書の著者間での連携があまりちゃんと行われず、妥協の産物として等量の文章をバラバラに割り振ったように見えるのはどうかと思います。
もうちょっと何とかならなかったのでしょうか…。

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  1. 2017/07/24(月) 00:54:19|
  2. ★★★
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