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雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

アメリカ大都市の死と生

Hyper den-City」や「都市は人類最高の発明である」で参考文献として挙げられていたものです。
この種の都市礼賛本を読んだ限りにおいては、どうやら本書がいわゆる「基本文献」的なもののようだと考え、一度読んでみることにしました。
ある種の分野においては、まず最初にこのような「基本文献」が発表されて、そこから爆発的に関連する議論が深まるということが起きるようです。
観光のまなざし」とか「災害の襲うとき」のような本がその例で、これらの本はどれもそれなりに難解なことが多いです。
一方、本書はどちらかといえば一般書と言っていいくらいの平易な内容です。
しかしながら書かれている内容については、とても説得力が強いように感じました。

本書の主張の核心部分は、「街には十分な数の歩行者がいなくてはならない」というところにあります。
歩行者がいないということは人の目が届かないことを意味しており、治安の悪化、街路の荒廃につながるからです。
そして、過去に街づくりの理想として議論された田園都市や、または計画都市などはその方向性からは全く真逆のところにあります。
巨大で整然とした公園や広場、広大な自動車用道路、圧倒的なモニュメントなどはすべて治安悪化と荒廃の要因となりやすいものです。
そのため、著者はごちゃごちゃした狭い町、エントロピーに満ちあふれた町こそが理想であると主張します。
このような理想を実現するためには、下記4つの要素が必要です。
  1. 地区内のできるだけ多くの部分が複数の主要機能を果たさなくてはならない。
  2. 街区は短くなくてはならない。
  3. 古さや条件が異なる各種の建物を混在させなくてはならない。
  4. 十分な密度で人がいなくてはならない。
繰り返しになりますが、いずれも過去理想とされてきた街づくりとは逆方向に位置します。
計画都市においては住宅地区と商業地区、工業地区、公共施設などが完全に分かれた状態で配置されます。
例えば「首都ブラジリア」でも、ブラジリアがそのように完全に地区による機能を分けて設計されたことが記されていました。
しかし、このような状態では、住宅地区は昼間に極端に人口が減少しますし、商業地区では夜間には人通りがほとんどなくなってしまいます。
そうすると、人の目がない時間帯に治安が悪化して街の荒廃が進みます。
一方、1で主張されるように地区内のある個所が複数の機能を満たしている場合、異なる目的を持った人が地区に新たに入ってきたり出ていったりするため、常にある一定の人通りが見込めます。
これは、整然とした計画に基づいた街づくりからは逆行しており潔癖症な方々には容認しがたいものでしょうが、実際は治安の向上には寄与するのです。

往々にしてありがちなのは、島国や領地が極端に狭い国では治安がよいのに対し、広大な土地を持った国では治安が悪いということです。
これは、街を作る際に道路を広げることができなかったため、必然的に車社会化が進行しなかったことが要因なのかもしれないと思います。
日本の治安が比較的良いのも、人が住める土地が狭かったことが影響しているのかもしれません。
確かにアメリカの郊外の高級住宅地などでは道路が広すぎてとても歩く気が起きず、歩行者の姿が全く見られないことが多いです。
そうすると、まるでサファリパークにいるように車という防御壁からでた瞬間に危険にさらされるというのもありそうに思いました。

本書に書いてあることはシンプルでわかりやすいです。
ただ、アメリカ人の書いた本にありがちなことに、同じ話題を何度も何度も繰り返し説明するために極めてくどい内容となっています。
同じ内容を説明するのに半分くらいの文章でもよいのではと思ってしまいますが…。
あと、巻末の訳者解説の文体は好き嫌いがありそうで、私は苦手でした。
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  1. 2017/07/15(土) 20:44:26|
  2. ★★★★
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

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