雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

Hyper den-City

都市の過密について述べた本は、本屋さんに行くとそれなりにたくさん見つかります。
私が読んだことがあるのは、「東京一極集中の経済分析」や「グローバル・シティ―」などですが、いずれも過密状態を絶対悪とまでは言わなくても、それほど良いものだとはとらえていません。
一方、本書では序章でデザイナーのブルース・マウの言葉を挙げて、過密が必ずしも悪ではないことを主張します。
密度は希望を提供する。
世界人口の半分が都市に居住する今、密度は急速にグローバルな条件となりつつある。
都市が高密になるほど生態系は維持しうる。
正しく計画されるかぎり、高密高層の都市環境は間違いではない。
交通も減り、下水やエネルギー、道路なども緊密にまとめることで効率化できる。
(中略)
都市の密度を上げれば、それだけ自然の生産の地域が解放され、田園も破壊されない。
そして、今度は著者自身の言葉でこう述べます。
有名な命題に「ノイラートの船」というものがある。
これは大洋に出てしまった船がかなり大きな故障を生じたとしても、寄港して修理をする環境になかったとすれば、航行を続けながら手元で可能な種類をし続けるしかない、という比喩である。
完全な解決(修理)を施された状態での航行は理想態であろうが、望むべくもないとしたら、この可能態以外のチョイスはない。
(中略)
Hyper den-CityはBignessの概念を経た「ノイラートの船」である。
故障(不都合)が仮にその大きさによるものであるとしても、この二一世紀のノアの方舟が一〇〇億の人口を積載するとすれば、当面ダウンサイジングは叶うまい。
可能なのは航海の無事(見事にではなくとも、何とかやりおおせること)を祈るだけだ。
Bon Voyageと。
シュリンキング・ニッポン」では「ファイバーシティ」なる概念が提唱されていました。
これは、地方の人口を中核都市に集約することで住民サービスのコストを削減することができ、しかも交通弱者にとってもやさしいまちができるというものでした。
いわゆる「コンパクトシティ」の主張とも相補するものですが、実際に日本でうまくいっているようには思えません。
ひとつには、住民サービスが分散するコストよりも車で移動するコストのほうが圧倒的に安いこととがあるでしょう。
そしてもう一つの原因は、自動車産業が世界経済に与えるインパクトの大きさにあります。
もしコンパクトシティが実現されて自動車の需要が大幅に減少してしまったとしたら、自動車に依存する分野の経済は大打撃を受けます。
このショックはあまりにも大きく、世界のほとんどの国の政府は車の総量規制に対しては消極的です。

本書では、かつての九龍城砦などを例に挙げて、都市空間のexplosionならぬinplosion(内破)を提唱しています。
これは、都市が外側への拡張に制限が生じた場合、内向きに空間を探し求めるということを言います。
九龍城砦では隣り合うビルがCageと呼ばれる仮設のベランダを通じてつながりあい、まるで一つの建物であるかのように複数の階層で連結していました。
本書の「東京計画二〇一〇」では、東京湾のエリアに巨大な立体都市を作り上げてそこに機能を集中させることを提案しています。
現在の東京は立体的な拡張が不十分なために職住が離れており、平面移動を余儀なくさせられることが通勤ラッシュを生んでいます。
これに対して、「東京計画二〇一〇」では上下方向の移動を取り入れることで職住近接を実現し、平面方向の移動を最小限に抑えることができるというものです。
一方で、空間が限られていることから貧富の差によってある地域では住居の環境が著しく悪くなることも認めており、このあたりが理想態ではないが可能態である、という所以なのでしょうか。

この「東京計画二〇一〇」でもファイバーシティの構想と同じく、経済的な観点がごっそり抜けおちているように見えてしまいました。
超高層ビルを地震国である日本で作るための建設コスト、彼らに大量に生活物品を供給するための物流コストなど…。
そして、このような過密都市は万一エネルギーの供給が止まってしまうと、壊滅的な状況となります。
絶対に停電を起こさないような自律したバックアップシステムが必要ですが、この維持管理には莫大なコストが必要となるでしょう。
超過密都市が必要だ!というのならば、なぜ現状でそのような都市が実現されていないかを分析してほしいとも思います。

本書は価格の割にはトピックスが豊富で、一読するにはとても面白い本だと思います。
内容には必ずしも同意しないところが多いのですが…。
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  1. 2017/05/01(月) 20:28:56|
  2. ★★★★
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