雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

天安門

著者のリービ英雄は「9・11 変容する戦争」で「千々にくだけて」を読んだことがあったのですが、「未完の平成文学史」で著者が紹介されているのを見てまたほかの作品を読んでみたくなりました。
リービ英雄は、アメリカ生まれですが、父親の仕事の関係で子供のころは台湾に住んでいました。
その後、両親の離婚に伴い香港へ移住。
さらに青年期には日本にわたり、プリンストン大学在学中からは日本とアメリカを往復する生活に入ります。
40歳でスタンフォード大学の教授を辞職して以降は日本に定住するという複雑な経歴の持ち主です。
母国語は英語ですが、日本語で小説を書き、北京語も会話はできる程度には堪能です。
やや、「日本を称賛する外国人」として利用されることが多いのが気になるのですが…。
本書に収められている短編は、いずれも著者の経験に基づいており、自分のルーツを探すために中国を訪れた白人を描いたものです。

いずれの作品も過去と現在が行ったり来たりして読みづらく、かつ同じようなテーマが続くので飽きてくるというのはあるのですが、著者の特異な出自による浮遊感がとても良く伝わってきます。
本書を読んでいると、著者は中国で露骨に収入を聞かれたり、旅行者や現地の業者にぞんざいな扱いを受けたりと、不快な目にばかり遭っているように見えるのですが、それでもたびたび中国に行くのはなにか執念のようなものを感じます。
とくに、古代に中国に移住したユダヤ人の痕跡を探る「ヘンリーたけしレウィツキーの夏の紀行」を読んでいると、ルーツというものの重さが印象的でした。
今となっては当時のユダヤ人は完全に同化してしまい、「彼らがユダヤ人の末裔だ」ということすらいうことができません。
それでも、シナゴグの跡であり、今では単なる井戸のような穴となってしまった箇所にたどり着いた時の満足感は、自らの故郷をもたない著者の同化に対するあこがれの表れなのかもしれません。
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  1. 2017/04/02(日) 08:19:00|
  2. ★★★★
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  4. | コメント:0

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