雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

人工知能のための哲学塾

本書は、スクウェア・エニックスでゲームキャラの人工知能開発に携わっている人物によるものです。
著者が発起人となって全五回にわたって行われた「哲学塾」なる催しにおいて、講演した内容をまとめたものです。
フッサールやデリダなど、主に大陸系の哲学者を題材にしたものとなっています。
少しだけ毛色の違うのが「生物から見た世界」のユクスキュルです。
ユクスキュル自体は生物学者なのですが、生物からは世界はどのようにとらえられているのかという観点からは、確かに哲学ともいえるなとも思います。

哲学の世界でこれまで得られてきた結果を活かして人工知能の開発が進んできた…というような内容なのですが、素人ながら本当にそうなのかとても疑問に思いました。
人工知能の開発は単独で進んでいて、その成果を哲学の概念に無理やり当てはめるとこうなった、というような印象を受けたのです。
冒頭の現象学にしても、現象学がデカルト的な懐疑ではなく、判断停止を行うことにより広い領域の現象を取り扱うことができると主張するのはその通りなのでしょうが、そのことと人工知能に対して「志向性」を与えることとの関連性が極めて薄いように見えます。
現象学という広い領域のごくごく一部を都合よく取り出して人工知能の分野に引っ張ってくることで、学問的な「それっぽさ」を与えようとしているようにも見えたのですが…。
ただ、本書の分量からして人工知能について深く述べることは不可能であり、その述べられていない部分において本当に現象学と深く重なり合っているという可能性もあるのですが、無理やり今風のかっこよさを作り出しているような印象を受けました。
(「サイエンス・ウォーズ」で解説されていた「ソーカル事件」を思い出します。)

むしろ本書で扱われているような形而上学的な哲学ではなく、実験科学的な認知情報に関する学問のほうが親和性が高いのではないでしょうか。
無理に遠い分野とつなげようとするよりも、地道に近い分野同士の共同で得られた成果をちゃんと固める方が先のようにも思います。
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  1. 2017/03/19(日) 19:14:53|
  2. ★★
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