雑記+ブックレビュー

書評というほどのものはありません。読んだ本に絡めて、日々思うことなどを書いていこうと思います。

言語起源論の系譜

言語起源論とは、あらゆる生物の中で人間にだけ与えられた言語がどういった起源を持つかについての議論です。
本書では「キリスト教世界における」言語起源論について述べられています。

大まかに分けると、言語は神から人間に与えられたものだという考え方と、言語は神とは関係なく人間の特性として得られたものだという考え方の二種類があります。
また、この対立軸とは別に、世の中にあふれかえっている多くの種類の言語の祖たる「原言語」のようなものが存在するのか、または多くの言語はそれぞれが個別に独立して発生したのか、という分け方も考えられます。
容易に想像できることですが、古代から中世の西洋においては言語は(キリスト教の)神による賜物であり、かつすべての言語の始まりはヘブライ語だという考え方をする人が多かったようです。
この説をとった場合、やり方によるとたとえばあらゆる人間から隔離されて育てられたいわゆる「野生児」は、自然とヘブライ語を習得するはずだという結論を導くことも可能です。

この議論は、自国の言語をあらゆる言語の祖であると主張することにより国威発揚にも利用できることもあり、古来から多くの思想家がさまざまな意見を述べてきたようです。
ただし、そのどれもが、いわゆる「反証可能性」を全く備えておらず、どれも言いっぱなしのように見えます。
言葉を変えれば、誰もが好き勝手な推論を主張することができて、かつお互いに相手の説を覆すことが不可能なため、あらゆる説が乱立したうえに、その時代の雰囲気によってそれぞれの説の優劣が目まぐるしく入れ替わってしまうというたぐいの議論なのです。
丹念に時代を追ってこれらの説を追っているのですが、正直言って私の好みからは全く外れており、意味のない空想を延々と読まされているような気分になってしまいました。
予想通りというか、最終的にはチョムスキーの生成文法論に到達することになります。

言語に起源などというものがない以上、言語の起源とは何かを問うことには意味がない、というもっともだと思われるソシュールの考えにたどり着くまでの助走期間が長く、とても読んでいて疲れる本でした。
この種の本にしては異様なほど安価ではあるのですが…。

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  1. 2017/02/08(水) 21:20:16|
  2. ★★
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